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お休みいただいて・・

 このごろ、米原万里の著作をいくつか読んだ。米原さんは、 昨年亡くなったロシア語の通訳者で、笑いと風刺の効いた、軽妙なエッセイに人気がある人だ。その内容もさることながら、 彼女の言葉に対する知識や、既成の概念に囚われない感受性と批評に、触発されるものが多い。ストレートな批評よりも、小咄ふうの話の展開と、 本筋からずれていく『落ち』がいい。

 お話も文学も区別のない幼い頃から、言葉とは面白いと感じていた。 生活していた地域の方言のことで考えさせられたのも、子供の頃だ。地元人でない教師が「まだ若い女の人に『おばあ』と呼ぶなんて」 と批判したが、実は『叔母』を『サン』なしで呼んだのだった、とか。父と母が、『父ちゃん』『母ちゃん』と呼び合うのは間違いで自分は妻を 『家内』と呼ぶ、と言った人とか。奇妙にしっかり覚えている。

 当時はもちろん、今も変わらず、時代と言葉の変化にはとまどうことが多い。 特に敬語の使い方は物議を醸すし、わかりづらい。事業所などの電話応対で、いつも違和感を覚えるのは、 休んでいる従業員にかかってきた電話に対して「○○は本日おやすみいただいておりますが」という言葉。これは、 従業員が会社から休暇を『いただいて』休んでいるのか、それとも会社が従業員にお願いして『休んでいただいている』のか。 文脈からは、後者の意味に聞こえる。

 「患者様」などという過度な敬語がおかしいと、やっと言い換えられるようになったようだが、 この「おやすみいただいて」は、電話の受け答えでは定番の言い方になっているらしい。休暇を『与える』 などという僭越な企業意識を表に出してはまずいから、謙虚な言い方にしたのだと、五十歩ばかり譲って解釈を試みた。しかし、 電話の相手は取引先かお客様か、とにかく外部の人である。身内に対する敬語の使い方にも反するのではないか、と、悶々とするばかりで、 違和感は解消しない。

 

投稿者 ranran : 2007年09月11日 22:52

コメント

私が努めていた会社では「お休みをちょうだいしております」と言ってました。
「本来出社して御社の電話に対応しなければならないところをお休みをとらせていただいている」って感じですかね。
いずれにせよ、過剰謙遜だとは思いますが、客商売だと休んでいるとは言いにくくて…長期休暇だとホワイトボードに「客先には海外出張中と言うように」と注がついていたりしました。

私も米原万里さん大好きで、著作がでるのを待ちかねて買っていました。
二つの文化を熟知しているというのは、強みでもあり、しかしながら本人にとってはストレスフルなことでもあったろうと思います。

投稿者 kyung [TypeKey Profile Page] : 2007年09月11日 23:25

電話の相手に対する謙遜というわけですね。言葉を過剰に丁寧にすることで、意図をわかりにくくしたり、反感を持たれないようにすると云うような目的もあるのかも知れません。

投稿者 ranran [TypeKey Profile Page] : 2007年09月13日 17:35

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